硝子秘伝書
その3 硝子の研磨
第3回目は、いよいよ研磨に関する話題です。「いよいよ」とわざわざ記したのは、実は私がガラスの加工の中でも最も長く従事したのが研磨でありそれ故他の加工技術よりも思い入れが強いからです。ただ、その分泣かされました。
ガラスを研磨する方法は切断と同様世の中に種々あり、その材料の特性あるいは要求品質にマッチした方法が使われますが、ここでは遊離砥粒と研磨パッドを用いた研磨に限定して話を進めます。このガラスの研磨はこれら研磨剤と研磨布(研磨パッド)さえあれば基本的に可能です。ただ、研磨品質と研磨能率を同時に極限まで高めようとすると極めて難しくなるのは研磨に従事されている方々には周知のことと存じます。
なぜならそれらは俗にいうトレードオフの関係にあるからです。つまり品質を上げようとすると能率は下がり、能率を上げようとすると品質は悪化する傾向があります。通常は要求品質が先に決定されますから、いかに能率良く研磨するかが勝負になります。この時、革新的な研磨法を開発するのでなければ、世の中の研磨材、研磨パッド、研磨機を用いて研磨方法を最適化することになります。この組み合わせは無限といっていいほどたくさんありますが、この内ユーザーが研磨機を製作することは事実上難しく残る要因の研磨材、研磨パッド、研磨条件の最適化になります。これら3要因の内、研磨条件は圧力と速度が2大要因になります。いづれも大きくすると能率は上がります。これは研磨の基本式であるプレストンの式に反映されています。ただし、大きくしすぎると面だれ等の品質上の問題が発生することは周知の通りです。研磨材は遊離砥粒の大きさで品質、能率が決まります。これもトレードオフの関係があります。ただ、研磨剤は信頼出来る研磨剤を用途に応じて用いれば良いというのが実感です。最後に残る研磨パッドが実は最も研磨に影響するのではないかというのが私が研磨に従事して得た経験則です。実際、さんざん悩まされた品質上の問題が研磨パッドをあるメーカーのある製品に変更することで解決されました。この時の印象が特に強かったからかも知れませんが、研磨パッドには非常に強い関心を持っております。研磨パッドのメーカーは研磨材メーカーに比べて数が多く、また1メーカーの製品数も多いことから、その中からベストのパッドを選択することは至難のわざで昔エジソンが電球のフィラメントの素材を世界中の材料から探した状況と共通するところがあります。ガラスの加工から離れてしまった今でもどのような特性を有する研磨パッドが良いのか探索したい誘惑にかられることがありますが、他社がまねのできない高品質、高能率を達成するためには、やはり革新的なコンセプトをもつ研磨法やそれを実現する研磨機を機械メーカーと共同で開発する方が良いというのが私の結論です。
次回はガラスの加工から離れてガラスとITに関する話題です。ご期待ください。
※NTR News第15号 (2001年4月20日発行) に掲載

