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硝子秘伝書

その5 ガラスの成形<板ガラスを作る製板について>

ガラスのプロセスに関する話題もこれで最後となりました。

融液状のガラスを板状に成形する方法は他のガラスのプロセスと同様種々存在しますが、独創的かつ大量生産現役バリバリの方法といえばやはりフロート法でしょう。周知のようにフロート法は溶融錫の上に融液状のガラスを浮かせて平坦な板状ガラスを得る方法です。水面に浮いた油膜から連想したとも聞いておりますが、それをガラスの製板へと発展させた開発者達の発想と努力には頭が下がる思いがします。このフロート法は溶融錫上に融液状のガラスを浮かせるというユニークさからそのことのみが強調されますが、フロート法の最大のポイントは溶融炉出口の煉瓦に接触したガラスが板ガラスリボンの両サイドに向かうようにして煉瓦異物等が製品となるガラスに含まれないようにしていることです。これらの技術が平滑、平坦、均質な板ガラスを製造する世界に革命をもたらしたことは言うまでもありません。

しかし、最近の電子基板用板ガラスに対する要求品質は極めて高いレベルになっております。その代表的な品質が表面の平坦度です。フロート法で製板された板ガラスには、その一方向に極めて微小な表面うねりが存在します。通常の窓ガラス用途では全く問題にならないレベルでも、高精度の電子基板用となると話は別です。十数年前の私とフロート法との出会いは、この微小な表面うねりの発生原因を解明することでした。前回お話ししたシミュレーション手法を用いて予想通り製板上のガラスへの応力が微小うねり発生の一要因になっていることまでは推定できたのですが、残念ながら完全解明には至りませんでした。その後、他の方々が高度のシミュレーション技術を駆使して解明したことを知り、心の中のモヤモヤも晴れた次第です。おそらくフロート法は今後もますます洗練され、不動の地位を確固たるものにしていくでしょう。

ただその一方で「ひょっとしたら世界のどこかで誰かがフロート法を凌駕する大量生産方法を開発しているのではないか、そして突然新しい製板法が出現するのではないか」という思いが私の頭を離れません。

危機管理の大原則は Never say never(決して・・・でないとは決して言うな)とのこと。ガラスの製造方法や試験方法でも、ひょっとしたら現在の方法をはるかに凌駕する方法が出現して状況が一変するかも知れない、そのような危機感を抱きつつ私の拙文を終えたいと思います。この1年半、まことにありがとうございました。皆々様のご健勝を祈りつつ再び紙上でお会いできる日を楽しみにしております。

NTR News第17号 (2001年12月1日発行) に掲載

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