Glass万華鏡
第2回 ガラスのヤケって何ですか?
ガラスのヤケとは、ガラスに含まれている成分がガラス表面に析出する事によって出来る、微小異物(主にNa2CO3やNaHCO3など)や表面層の変質(シリカリッチ層の形成)のことです。ここで、ガラスの表面にヤケが生じるための原因を説明します。
一般のガラス(ソーダライムシリカガラス)には、アルカリ元素であるNaやKがイオンの状態で含有されています。これらのアルカリイオンは、ガラス中で比較的容易に動き回る事が出来ます。そのため、ある一定の割合でこのアルカリイオンがガラス表面に析出し、同様の割合でガラス内部に潜り込んで行きます。ガラスの中でアルカリイオンが自由に動き回れるのは、イオンの大きさが小さいためとガラスの構造が空間を持った網目構造に起因しています。
ガラスのヤケが発生するためのもう一つの大切な要素が水分です。これは、大気中の水蒸気から供給され、ガラス表面への吸着と蒸発を繰り返しています。
ガラス表面に析出してきたアルカリイオンと大気から吸着した水分が反応することにより、水酸化アルカリが生成されます。ガラス中へはアルカリイオンの代わりに水素イオンが入って行きます。表面に止まった水酸化アルカリが潮解して水分を集め、その水分に大気中の炭酸ガスが溶解する事によって、前述の微小異物が発生します。この微小異物は結晶である事や酸で溶解できる事で確認する事が出来ます。
この微小異物がガラスの最表面に多量に出来る事によって、ガラス表面層のNa含有量が減少した元のガラス組成と異なった変質層が形成されます。この現象が前述の表面層の変質に相当します。この変質層は厚みによって黒色から虹色までの干渉色を示すため、ガラスの表面観察から確認する事が出来ます。
ヤケの進む過程において、ガラス表面に生成された水酸化アルカリはガラスそのものを溶解します。ガラスは水酸基と水によってゲル状に加水分解され、異物(Na2CO3、NaHCO3の他にCaCO3等)の発生やシリカリッチ層の形成を促進します。
最後に、上記のヤケと類似した現象として汚れによる異物付着がありますが、付着異物は除去する事が可能であり、かつ、除去した後のガラス表面の変質はありません。一方、ガラスのヤケは表面変質であり、かつ、ガラスの持つ特性の一つとも言い替える事が出来ます。ガラスは無機物であり不変な物と思われていましたが、最近では、ガラスはなま物であり賞味期限がある物との認識がされつつあります。
※NTR News第20号 (2002年12月10日発行) に掲載

