分析・試作のご依頼 分析・試作、その他各種お問い合わせ

表面分析技術紹介−オージェ電子分光分析装置−

NTR News第15号 (2001年4月20日発行) に掲載

オージェ電子分光分析(以下AESと略)は、表面分析の分野では、SIMS(2次イオン質量分析)やXPS(光電子分光分析)と並んで3種の神器にたとえられるほど存在感のある手法です。しかし、名前を聞いたことがない。という人も多いようです。そこで、今回は「AESって何?」を紹介します。

AESは、表面に電子線を当てることで放出される各種の量子や粒子の中で、オージェ電子と呼ばれる電子を利用します(図1)。

fig1

図1. 入射電子線と試料との相互作用

TVのCMなどに登場する花粉などのモノクロ像は、電子顕微鏡によって撮影されますが、実はこれも電子線を当てて発生する電子(2次電子と呼ばれる)を利用しているのです。この電子顕微鏡を用いれば、肉眼では見えない小さなものを何万倍という高倍率で観察することができます。つまり、電子を照射することで、形状観察とオージェ分析が同時に可能となるわけです。電子線のビーム径は、サブミクロンはらくらくクリアするほど細く絞ることができますので、微小な分析領域を決定することができます(ただし、どこまで微小領域が測定できるかは、個々の装置の性能に依存します)。また、オージェ電子は表面からわずか数nm深さの情報を、H(水素)の次に原子量が軽いLi(リチウム)以上の元素について伝えてくれます。このような特徴は表面かつ局所の組成分析に威力を発揮することとなります。

たとえば、ITO/SiO2/Glass基板の構造を持つ試料で、数μmの範囲でITO膜剥離が発生した場合、約10nmの厚みを持つSiO2が残存するかどうを確認することは容易ではありません(図2)。

fig2

図2. 膜剥離が発生した試料のイメージ

AESで剥離部最表面を分析した結果、ガラス成分であるCa(カルシウム)などは検出されませんでした(図3)。従って、「SiO2は残っていそうだ。」ということになります。余談ですが、AESのスペクトルは微分型で表示されるのが一般的です。というのも、図1に示したように、オージェ電子以外にも多くの電子が発生するため、この寄与を除去する意味があります。本論に戻りますが、さらに剥離部で残っていたSiO2が正常な厚みをもつかどうかは、Ar(アルゴン)イオンスパッタリングを併用した深さ方向分析により明らかにすることができます。これは、試料表面に高速のArイオンをぶつけて、表面原子を剥ぎ取りながら、測定を繰り返し、表面近傍の深さ方向の組成分布を知るものです(図4)。

fig3

図3. 剥離部最表面のオージェスペクトル

fig4

図4. オージェによる多層膜の深さ方向分析例

各層の界面をクリアにする(=深さ方向分解能を上げる)ことがもっとも重要ですが、深さ方向分解能はイオンスパッタリングに起因するもの、試料に起因するものなど、種々の要因によって影響されます。

当社では、この問題に効果的な方法といわれる、試料を回転しながらイオンスパッタリングする機構を採用することが可能です。このように優れたAESですが、この「最表面に敏感」という特徴が弱点となることもあります。電子を照射すると、ガラスなどの絶縁物を分析する際には「帯電(チャージアップ)」と呼ばれる現象により、分析不可能な状態に陥ってしばしば悩まされることとなります。前述の電子顕微鏡では、試料表面に導電性物質をコートして、試料に蓄積された電荷を逃がす方法をとります。が、AESで同様の処理をすれば、コート物質ばかりが検出されるということになりかねません。実際、AESなどの表面分析では、念入りに洗浄したものでも表面からCが検出されます。すなわち、大気中で付着したコンタミネーション(汚染物質)までもデータに現れてしまうのです。従って、AESで帯電を回避し、正常なデータを得るためには、加速電圧を下げたり、試料を傾斜させることがもっとも簡便な方法として知られています。(図5および図6)確かに条件さえ見つければ、さほど高空間分解能を必要としなければ、測定できない試料はほとんどないように思います(最近では、低エネルギーのイオンビームを照射して帯電補正を行う例が報告されはじめています)。

fig5

図5. 傾斜角30°・加速電圧5.0kVの場合

fig6

図6. 傾斜角60°・加速電圧3.0kVの場合


当社は、ガラス・セラミックを中心とした絶縁物のオージェ分析でお客様の問題解決をサポートします。是非、お気軽にご相談下さい。

このページの情報に関するお問い合わせは、当社伊丹事業所までお願いいたします。

ページの先頭に戻る

関連ページ

以下の技術情報もご参照ください。