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光をコントロールする物性の評価
※NTR News第18号 (2002年4月10日発行) に掲載
はじめに
ガラスの性質の中でもっとも魅力的なものの一つは、透明であることでしょう。
身の回りにもレンズなどの光学部品だけでなく、熱線反射ガラスや無反射ガラスなど、光を自在に操るガラスがあふれています。これらは、ガラス表面に薄膜を成膜し、光学的な性質をコントロールする方法が多くの割合を占めます。NTRではこのような光学薄膜設計・成膜事業を一つの柱としておりますが、この際には物質の光学的データを把握することが不可欠です。
今回は薄膜設計に欠かせない「光学定数評価」と、ガラスの光学特性として色調を決定する「内部透過率」としばしば問題になる「表面反射率」を取り上げました。
光学定数評価(偏光解析法:エリプソメトリー)
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図1. 測定・解析のフローチャート |
光学定数評価というより屈折率評価という方がなじみが深い評価方法かもしれません。光学定数とは物質の“光学的性質”を記述する最も基本的な物理量で、具体的には屈折率n、消衰係数kで示されます(時として膜厚dが含まれることもあります)。それでは、“光学的性質”と言ったらどんな特性かというと、物質の反射率であるとか、透過率であるとか、...前出の分光特性が代表的なものです。
当社では、分光エリプソメトリーといわれる手法を用いて、可視光から近赤外領域のバルク及び薄膜の光学定数評価を行っています。
1) 測定原理・解析手法
偏光解析法:エリプソメトリーはその名前のとおり光の“偏光状態“を検出することにより光学定数の解析を行います。エリプソメトリーでは入射光(直線偏光)とサンプル表面からの反射光(楕円偏光)の偏光状態の変化をPsiおよびDeltaという値で検出しています。PsiおよびDeltaと言う値は、反射光である楕円偏光の直交2成分の強度係数比と位相差に相当する値です。検出されたPsiおよびDeltaの値を用いて、評価しているバルクあるいは薄膜系の膜構成モデルを作成し、評価するバルクあるいは膜の光学定数をモデル関数をもちいて実測データに合うように最適化していきます。
2) 測定例
J. A. Woollam製VASEによるTiO2膜の測定・解析例を以下に示します。

図2. エリプソメーター実測データおよび解析データ
実測値を十分に再現していることが分かります。
図3. 膜構成モデル
最表面のsrough層は表面凹凸あるいは表面変質層の存在を示唆しています。
図4. 分光透過率・反射率データの実測値および解析値
基板が透明基板の際には分光データを取り込んで解析することができます。
分光特性データについても十分再現する光学定数値が得られていることが分かります。
図5. 得られた光学定数データ
このような単層膜解析は非常に一般的な例ですが、多層膜についても解析は可能です。
3) 光学定数の応用
光学定数評価のメリットは、光学薄膜の精度のよい設計をするための重要なデータとなる点です。現在は簡便な光学薄膜の設計ソフトが数多く市販されており、それらには基本的な材料の光学定数データも多数登録されています。しかし、実際に光学薄膜部品を作成する際には、成膜する装置、条件により光学定数値はかなり異なってきます。設計した通りの部品を精度良く作成するためには、実際に用いる成膜装置で成膜した薄膜の光学定数を把握する必要があります。さらに、ある波長範囲内の光学特性を設計するためにはその波長範囲における光学定数の波長分散特性を把握する必要があり、そのためには分光エリプソメトリーの利用は欠かせないと言えます。
ガラスの光学特性(表面反射率と内部透過率について)
屈折率naの空気中で、屈折率ngの平滑なガラス面に垂直に入射する光がガラス表面で反射する反射率ρsは、
と表されます。ngが光の波長λに依存すること、 naが波長依存性が小さくほぼ1であることから、上式は、
(2・1)
と表されます。式(2・1)のρs(λ) をガラスの表面反射率といいます。
光が均質な媒体中を通過する際には、一般にその媒体特性に応じた吸収が行われます。強度I0の入射光が媒体中を距離xだけ通過した後の透過光の強度Iは、
と表されます。ここでaは吸光係数と呼ばれ、光の波長に依存し媒体特性を表すものです。板厚xの板ガラスに垂直に入射した光が、ガラス内部を透過する透過率(ガラス表面での反射率を考慮せず)はI/I0であるので、上式より、
(2・2)
と表されます。式(2・2)のτi,x(λ) をガラスの内部透過率といい、ガラス品種(色)により異なる値を持ちます。
表面に薄膜加工を施していない板厚xの板ガラス(膜無しガラス)の垂直入射に対する透過率τ(λ)、反射率 ρ(λ) は、ガラスの表面反射率ρs(λ)、内部透過率τi,x(λ) からガラス表面での多重反射を考慮して次式で表されます。
(2・3)(2・4)
τ(λ), ρ(λ) が既知ならば、式(2・3)(2・4)から逆にρs(λ), τi,x(λ) を求めることができます。一例として、フロートガラス2mmの透過率τ(λ)、反射率ρ(λ) の測定値より、ガラスの表面反射率ρs(λ) を算出してみましょう。
図6に透過率と反射率の測定値より算出した表面反射率ρs(λ) を示します。ここでは、便宜上、top面とbottom面の表面反射率の違いは考慮せず、両面の反射率測定値を平均したものを反射率ρ(λ) として扱いました。
図6. ガラスの表面反射率
ところで、式(2・2)より、同じ品種(色)で板厚の異なるガラスの内部透過率は次式で換算できます。
(2・5)
ここで、τi,x(λ), τi,x'(λ)は、板厚 x, x' のガラスの内部透過率です。τ(λ) とρs(λ) が既知ならば、式(2・3)から逆にτi,x(λ) を求めることができます。そこで、各種ガラスの透過率の測定値とガラス表面反射率から内部透過率を求め、さらに板厚5mmに換算したものの算出例を図7に示します。
図7. 各ガラス品種(色)に対する内部透過率(5mm換算値)
以上のようにして、ガラスの光学特性は説明できます。
是非、一度当社の技術をお試し下さい。また、ご相談ありましたら、必要に応じて訪問させて頂きます。皆様のご相談をお待ちしております。
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