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赤外分光分析
−顕微赤外分光法と赤外放射測定−
※NTR News第19号 (2002年8月1日発行) に掲載
はじめに
フーリエ変換赤外分光法 (FT-IR) は従来の分散型分光装置と異なり、回折格子などの分散素子を用いず干渉計を利用して干渉曲線(インターフェログラム)を測定し、それをフーリエ変換して横軸を波数とする通常の赤外吸収スペクトルを得る方法です。
原理的には試料に一回通された広い波長範囲の光を解析することにより完全な赤外吸収スペクトルが得られることから、積算することにより微量の試料でもスペクトルが得られる、高速、高感度の測定方法です。図1に装置外観および分光器の模式図を示します。
その特長を生かして、測定対象物の形状、大きさや得たい情報に従って様々な測定方法が発展しています。その例として、顕微赤外分光法、赤外放射測定があり、お客様からとくにご依頼の多いこれらの測定方法についてご紹介したいと思います。
図1. フーリエ変換赤外分光光度計
顕微赤外分光法
顕微赤外分光法(顕微IR)は、微小な試料の分析方法として有用です。歩留まり低下の原因となる付着異物の分析などに用いられ、通常のFT-IRと同様に異物の化学構造や官能基に関しての情報が得られます。光の回折限界などから最小測定域(空間分解能)は15〜20μm、検出限界は50pg程度であると言われていますが、顕微鏡で試料を観察したとき、大きさが10μm角以上あれば、ほとんどの場合測定することができます。
顕微IRによる異物分析の実例をフローチャート(図2参照)に示しました。顕微鏡写真に示すように、レンズ表面に付着異物があります。異物は100μm角エリアを超える大きいものですが異形状の表面上でこのままでは透過法やATR法で分析できませんので、IRを透過するシリコンウエハー上に異物を掻き取る方法をとります。マイクロマニピュレータを用いて微細な針先で異物を掻き取り、平坦なシリコンウェハー上に載せます。そしてこの試料を用いて顕微IRで透過測定した結果、右のようなアミド化合物と推測される赤外吸収スペクトルが得られました。
この例は有機物の付着異物でしたが、無機物の場合でも例えば陰イオンや酸化物について情報が得られますので、電子プローブマイクロアナライザー (EPMA) などの元素分析と合わせることにより、異物の種類を特定していきます。この分析結果を手がかりに、付着異物の発生原因の推定と対策を行うことができます。
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図2. 顕微IRを用いた異物分析(例)
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図3. 赤外放射測定ユニット(日本電子IR-IRR200) |
赤外放射測定
当社のFT-IRの特徴の一つとして、この赤外放射測定が可能な付属装置があることです(図3参照)。装置の説明の前に、簡単に赤外放射についてご説明します。
物体からの赤外線放射は、物体内での電子の自由運動、原子の振動、回転および結晶の格子振動などによって発生する現象です。従って絶対零度以上の物体は必ず赤外線を放射し、その強度は温度と波長に依存します。
物体は入射エネルギー(電磁波)の一部を吸収して熱エネルギーに変換し、残りは反射または透過しますが、吸収率をα、反射率をρ、透過率をτとすると、以下の関係が成り立ちます。
- α + ρ + τ = 1
熱平衡状態にある物体では、吸収するエネルギーと放射するエネルギーが一致するため、放射率εは吸収率αと等しいことになります。特に赤外線を透過しない(τ=0)試料は、反射率と吸収率には以下のような関係があります。
- α = 1 - ρ
入射エネルギーを全て吸収して反射も透過もしない物体は黒体と呼ばれ、当然ながら吸収した全てのエネルギーを放射し(ε = α = 1)、その放射強度はプランクの式から求められます。
一方、実在する物体の(分光)放射率εは、FT-IRで測定した分光放射強度Eと、プランクの式から計算で求めた黒体の分光放射強度EBとの比から求められます。普通、一定温度で測定しますので、各項は波長依存の値となり、スペクトルが得られます。
- ε = E / EB
放射(発光)の測定は、試料中の結合振動の情報を得る方法として、透過・反射測定とともに古くから行われてきましたが、最近では、セラミック材や遠赤加工した物品の分光放射強度や分光放射率から製品特性を評価するという使われ方が多いようです。
当社のFT-IR(日本電子JIR-5500型)に付属の赤外放射測定ユニットでは、上記の放射強度の測定により、放射スペクトルを得ることができます。
試料が熱による物性の変化を起こさない限り40〜600℃の範囲内で測定可能です。試料表面の温度測定は、熱電対を試料表面に当てて測定していますが、その測定誤差によって求められる放射率が大きく異なります。そこで耐熱塗料を塗ったステンレス板(放射率0.90)の放射率が正しく得られるように温度の測定値を補正してから試料を測定しています。
あるセラミック材料の放射スペクトルを図4中に示します。試料中の結合振動に由来して特定の波長の放射率が低下するため、材質によって特徴的な放射スペクトルが得られます。また、遠赤加工済みと未加工の試料をそれぞれ測定し、放射率と波長による放射特性を比較することができます。
なお、前述した吸収率と反射率の関係(α = 1 - ρ)から分かると思いますが、同じ材質の試料でも表面の粗さによって反射率が変化するため、吸収率すなわち放射率も試料表面の粗さに影響を受けます。つまり放射率には試料の材質による特性に加え、表面粗さといった特性も内包したデータになりますので、データの比較の際には注意が必要になります。
図4. 赤外放射測定
FT-IRを用いた分析方法は他にもありますので、お気軽にご相談下さい。
是非、一度当社の技術をお試し下さい。また、ご相談ありましたら、必要に応じて訪問させて頂きます。皆様のご相談をお待ちしております。






