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初級コース ガラスの特徴とガラス転移点
※NTR News第24号 (2004年4月1日発行) に掲載
これまで10回に渡り連載してきました「Analytical Recipe」は、前回のNTR Newsの23号をもって一旦終了させて頂きました。今回からは、さらに内容を充実させ「Glass University」を開講していきます。このコーナーは、当社の試験分析技術だけでなく、広くガラス技術に関してちょっと考える部分も含めながら、さらに測定原理や分析対象となるものの詳細な記載や現象についても解説していきたいと考えております。第1回目は「ガラスの特徴とガラス転移点」について当社の酒井千尋が記載します。講義の難易度は著者が独断で付けさせて頂きました。
ガラスとは
狭義の定義では、溶融した液体を急冷させて結晶化させずに過冷却状態 (supercooling) のままで固化させた無機物として定義され、(1) 融液を冷却する、(2) 結晶ではない、(3) 無機物であることが必須の条件になります。通常のガラスでは、このような狭義の定義でも大きな問題が無いので一般的にはこれらがガラスの定義といえます。いっぽう、広義の定義では、ガラス転移を示すものをガラスと呼び、ガラス転移を示さないものはいわゆる非晶質と呼んでおります。すなわち、ガラスは非晶質材料の一部であり、ガラス転移点 (glass transition temperature) を持つものを示すことになります。
結晶質 (crystalline) は、原子や分子が規則性を持って配列された物質であり、また非晶質 (non-crystalline) は原子や分子の配列が規則性を持っていないことを示します。ある組成において、最もエネルギー的に安定なものが結晶であり、速度論的な影響が大きいと結晶にならないで非結晶になると言われております。
ガラスの特徴
図1は、ガラスの温度と体積の変化(比容)を模式的に示しております(文献1)より抜粋)。ガラスは加熱されると融点 (Tm) 以上の温度では液体になります(状態A)。これらの融液がゆっくりと冷却されると、原子や分子が規則的に配列して結晶化が起こります(状態B)。この温度は融点 (melting point) とか凝固点 (solidifying point) などと呼ばれます。結晶化は融液がさらに徐冷されると起こりますが、このとき急激な体積の減少(B→B1)が起こります。しかし、融液が適当な条件で比較的早く冷却される場合には、融点 (Tm) に達しても原子や分子の配列が起こりにくく、結晶にならず液体のまま過冷却されます。これを過冷却液体 (supercooling liquid) と呼びます。
液体の冷却が進むと粘度は徐々に増加し(状態B→C)、さらに冷却が進むと固体状態になります。この温度をガラス転移点 (glass transition temperature :Tg) と呼びます。ガラス転移点は過冷却液体がガラス状態に変わる温度で、一般的には熱膨張曲線の解析から求められます。ガラス転移点の位置は冷却速度に依存し、急冷条件では高温側に移動するのに対して徐冷すると低温側に移動します。ガラスはこのような熱履歴を反映した構造を持つために、この温度を仮想温度または凍結温度 (fictive temperature) と呼びます。
図1 ガラスの温度−体積変化の模式図
図2は、上記のガラス転移点や熱膨張係数を測定するための熱機械分析装置 (TMA:Thermo Mechanical Analysis) の構成の概要を示します。既に膨張係数が解っている石英ガラスや白金、あるいはシリコンなどを標準サンプルとして用いて、測定するガラスの熱膨張係数、伸縮率、ガラス転移点、あるいは屈伏点(降伏点)などを測定します。TMAの測定では、標準サンプルや未知サンプルに5mmφ×15〜20mmの円柱状の形状のものを用います。
図2 TMA (Thermo Mechanical Analysis) の概要
図3は上記のTMAによって計測されたソーダ石灰珪酸塩ガラス(通常の窓ガラス)の熱膨張曲線とガラス転移点の計算結果を示した図です。これらの測定結果から熱膨張係数αは以下の式で示されます。
- α(T1〜T2)=dL/(L0×dT)+α0
ここで、αは平均熱膨張計数 (K-1)、dLは温度差dTでのサンプルと標準長さの伸びの校正値 (mm)、L0は基準温度(室温)でのサンプル長さ (mm)、dTは基準温度から測定温度の温度差 (oC)、そしてα0は基準温度から測定温度の温度範囲での石英ガラスの平均熱膨張計数 (K-1) を示します。
図3 TMAによる膨張曲線
ガラス転移点は、図3に示された熱膨張曲線の変曲点を数学的に解析することによって求められます。この計算では、測定された熱膨張曲線の異なる接線の交点を求め、その交点で示される温度をガラス転移点とします。このガラス転移点よりも低温側では、一般的な珪酸塩ガラスは、シリコン (Si) と酸素 (O) から成る四面体を基本としたネットワーク構造を持っておりますが(図4参照)、いっぽう高温側では、ガラスのネットワーク構造が崩されるために、ガラスの熱膨張量は急激に増加していきます。そして、ある温度以上になるとガラス自身も軟化するために、図2に示したTMA装置の測定機構によって、ガラスそのものが治具の貫入を受けることでガラスの熱膨張量は急激に減少します。この温度を屈服点(または降伏点)といいます。降伏点は、一般的にはガラスの軟化点(logη=7.6の粘度)よりは低温側にありますが、熱焼成や高温処理などの基礎的データとして軟化点と比較して用いられます。
図4 ソーダ石灰珪酸塩ガラスの構造の概要(文献2)より引用)
参考文献
1) 「ガラスハンドブック」作花済夫・境野照雄・高橋克明 編集、朝倉書店
2) 土橋正二 「ガラス表面の物理化学」、講談社
当社は、ガラスの高温物性(粘性・熱膨張・熱伸縮など)の試験を得意としております。ガラス高温物性試験は是非当社にお問い合わせお願いします。
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