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初級コース ガラスの構造
|はじめに|ガラスの構成|結晶質・非晶質|短距離構造・中距離構造|架橋酸素・非架橋酸素|原子の配列数|参考文献|
※NTR News第27号 (2005年4月1日発行) に掲載
はじめに
ガラスの特徴に透明であることがありますが、その理由のひとつは原子の並びが不規則なために光をさえぎるような境ができないことが挙げられます。このようにガラス構造はその性質と大きく関わりがあり、切り離すことができません。そこでGlass University 第4回では「ガラスの構造」について説明したいと思います。
ガラスの構成
ガラスを形成する物質、とくに酸化物は、1) 単独でガラスを形成できる「ガラス形成酸化物」、2) ガラス化はしないが、ガラスに取り込まれることによりネットワークの切断が起こり、ガラスの性質に大きな影響を与える「網目修飾酸化物」、3) 単独ではガラス化しにくいが、いくつかの成分を混ぜ合わせるとガラス化する「中間酸化物」に分類できます。1) としては典型的なガラスの主成分であるSiO2をはじめB2O3、GeO2、あるいはP2O5など、2) としてはNa2OやCaOなどのアルカリ酸化物やアルカリ土類酸化物、3) としてはAl2O3、TiO2、またはPbOなどがあります。ガラスはこれらの化合物の組み合わせることにより構成されます。
結晶質・非晶質
固体は結晶質と非晶質に分けられ、原子やイオンの配列が規則正しいものを結晶質、不規則なものを非晶質といいます。ガラスは原子配列に秩序がなく、非晶質に分類されます。このとこは、X線回折の結果からわかります。ある物質にX線を照射したとき、結晶であればブラッグの反射条件を満たす反射角の位置での回折線が鋭いピークとして観測されますが、非晶質では幅の広いピーク(ハローと呼ばれる)として観測されます。例として図1にシリカ (SiO2) からなる水晶およびシリカガラスのX線回折図を示します。
図1.SiO2のX線回折図 (上)水晶、(下)シリカガラス
短距離構造・中距離構造
図2にシリカ結晶およびシリカガラスの構造の模式図を示します。両方の構造には共通点が見られます。すなわち1つのケイ素のまわりに4つの酸素が結合しSiO4四面体が形成され、頂点の酸素を共有して立体的につながっています。このような構造単位を短距離構造といいます。
SiO4四面体のつながり方が結晶とガラスでは異なりSi-O-Siの結合角は、結晶中では一定の値をとりますが、シリカガラスでは広い範囲に分布しています。そのため,ガラス中ではSi-O-Si結合角によってSiO4四面体が集まった4、5、6、7、あるいは8員環などの環構造を形成しています。いくつかの短距離構造が集まって形成されたこれらの構造単位は中距離構造と呼ばれます。
図2.結晶とガラスの構造の比較 (a) SiO2ガラス、(b) SiO2結晶
中距離構造の存在はラマン分光法やいくつかの実験手法によって示されています。ラマン分光法は、試料にレーザなどの光を当てたとき、分極率をもつ分子振動によって発生する散乱光を測定することにより情報を得る測定法です。
図3には、シリカガラスのラマンスペクトルを示します。440、485、800、1060、1200cm-1などのバンドはSiO44-に由来する振動に帰属されます。485、604cm-1のバンドについては中距離構造の存在を示すバンドで、それぞれSiO4四面体が3員環、4員環に対応すると解釈されています。
図3.シリカガラスのラマンスペクトル
架橋酸素・非架橋酸素
シリカガラスではすべてのSiO4四面体が頂点の酸素を共有してつながっています。この酸素を架橋酸素といいます。このような状態にあるSiO2ガラスに網目修飾酸化物であるNa2Oを添加すると、
- ≡ Si−O−Si ≡ + Na2O → ≡ Si−O- Na+ + Na+ -O−Si≡
のようにSi-O-Siの結合が切断されて、架橋酸素は非架橋酸素となります。非架橋酸素が生成すると、溶融温度が低下するなどガラスの性質が大きく変化します。
原子の配位数
シリカガラスおよびケイ酸塩ガラスでは、Siは4つの酸素と結合して配位数はどちらも4です。しかしながら、B2O3からなるホウ酸ガラスは、BO3三角形を短距離構造としBは3配位をとりますが、Na2Oなどのアルカリ酸化物を添加すると配位数は4に変化することが知られています。またNa2O-Al2O3-SiO2ガラスについてもAl3+は組成により4配位および6配位をとることが示されています。
ガラス中での陽イオンの配位数を調べる方法のひとつとしてNMR法があります。NMR法では、核スピンを利用して、原子まわりの電子状態について情報を得ることができます。ある種の原子核(スピン量子数Iが0でない)は核スピンを有し、その向きは通常はばらばらで、磁場の中に置くと決まった方向を向き、いくつかのエネルギー状態に分裂します。エネルギー差に対応する周波数の光を吸収すると核ピンは励起し、その後基底状態に再び戻るときに光を放つ。NMRではこの光を検出します。NMR法では核の化学的環境、すなわち原子の種類、イオンの原子価、配位数などについて調べることができます。
ホウ酸塩ガラスについては、R2O-B2O3系ガラス (R = Li、Na、K、Rb、Cs) についてNMRのスペクトルを測定し、配位数のわかった結晶のスペクトルと比較することによってガラス中のBの配位数が3であるか4であるか調べられています。NMR法により求めたホウ酸アルカリガラス中のBの割合を示したものを図4に示します。
図4.NMR法により求めたホウ酸ガラス中の4配位ホウ素の割合
参考文献
「ガラス科学の基礎と応用」著:作花済夫 編集:内田老鶴圃
「はじめてガラスを作る人のために」著:山根正之 編集:内田老鶴圃
「ガラスハンドブック」著:作花済夫・境野照雄・高橋克明 編集:朝倉書店
「ガラス工学ハンドブック」山根正之・安井至・和田正道 編集:朝倉書店
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