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中級コース ガラスの温度・粘度特性

粘度の定義ガラスの温度と粘度の関係測定法ガラス組成と粘度参考文献

NTR News第29号 (2005年12月1日発行) に掲載

粘度の定義

ガラスの温度と粘度の関係を話す前に粘度の定義を説明をします。粘性とは、運動している流体において速度勾配がある時、速度をならして一様にするような向きの接線応力が現れる性質です。解りやすく言うと、比較的小さな間隔Δxを隔てた2枚の平行平板の間に液体を挟み、片方の板を固定してもう一方の板を一定速度Δv (m・s-1) でずらすと(図1を参照)、板の動きに連れられて液体も移動し始める。このとき、動く板に近い液体ほど流れる速度は速くなり、板から離れるほど遅くなる。この速度の違いを一様にするような力が現れる性質が粘性です。この原因は液体の流れが液体を構成する分子間に働く摩擦抵抗によるものと考えられています。この応力をF (Pa=N・m-2) とすると、

  • F=η・Δv/Δx   (1)

で表されます。ここで、ηは粘度(粘性を示す値)です。その次元は [ML-1T-1] で表され、その単位は現在ではPa・sです。この粘性を示す物体を粘性体といい、分子が移動するときに、隣接する分子との間に生じる摩擦熱として、与えられたエネルギーが散逸し、力を取り除いたあとも変形が回復することがありません。また、粘性変形は時間に依存します。

図1

図1.粘性流動の概略図

式(1)の中のΔv/Δxはずり速度といわれ、液体を構成する分子の移動速度で、分子の移動速度が速い(すなわち分子の運動エネルギーが大きい)ほど、分子間の摩擦抵抗も大きくなるため、粘性抵抗が大きくなります。このずり速度や応力に関係なく、ηが一定である場合、つまり応力とずり速度(流動曲線)、粘度とずり速度が図2のような関係を持つ流体をニュートン流体といいます。

一般の液体では流動曲線が直線にならなかったり、原点が通らなかったりすることもあります。これらはニュートンの法則に従わないということから、非ニュートン流体と呼びます。複雑な流動を示す流体の粘度も式(1)と同様に定義され、ニュートン流動以外では粘度はずり速度もしくは応力の関数となります。ガラスでもひずみ速度が高くなると、粘度が減少する挙動がみられるため、非ニュートン流動を考慮する必要がありますが、基本的にはニュートン流体として取り扱われています。

図2

図2.非ニュートン流体の粘度と応力とずり速度の関係

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ガラスの温度と粘度の関係

ガラスの粘度は高温の液体状態から低温の固体状態に至るまでに102〜1014Pa・sと大きく変化するため、ガラスの製造における溶融過程、清澄過程、あるいは均質化過程のどの段階においても粘度は重要な因子であり、また成形過程でも同様です。ガラスの製造や成形における特性温度を表1、および図3に示します。

図3

図3.ガラスの粘性の温度特性

表1.ガラスの粘性の温度特性

溶融点 logη=2.0 泡切れを起こす温度
種取点 logη=3.0 竿に巻き取る・紡糸を行うのに適している温度
流動温度 logη=5.0 ガラス成形操作の目安となる温度
軟化点 logη=7.6 ガラスの変形流動が開始する温度
徐冷点 logη=13.0 歪を除く際の上限温度で、内部歪が15分で除去される温度
歪点 logη=14.5 粘性流動が事実上起こらず、これ以下でガラス中の歪が除去できない温度

成形に適当な温度幅は102〜106Pa・sに対応しており、この範囲が広いほど成形しやすいと言われております。そのようなガラスを「longなガラス」、また反対に温度幅が狭いものを「Shortなガラス」といいます。このように、ガラスの粘度範囲は広いうえに様々な温度範囲を持っているため、その測定には各領域に応じて異なった方法を用いなければなりません。詳細については3章で述べます。

Andradeによって、粘度の温度による変化は、液体と温度を分子論的に説明されることで初めて行われた。融液が流動する際に、原子もしくは流動単位があるサイトから隣接するサイトに移るために、高エネルギー状態である活性化状態を経由していると考えられていました。そのような過程で挙げられたのが、アレニウス型の(2)式です。

  • η=Aexp(E/RT)   (2)

(2)式は比較的狭い温度範囲では実験値と一致しましたが、広い温度範囲では粘度は直線関係ではなく、成立しませんでした。続いて、Eyringなどの多くの研究者が様々な理論を掲げましたが、現状では、Vogel-Fulcher-Tammanの経験式、

  • logη=A+B/(T-C)  (3)

が、液相温度以上からガラス転移温度までの広い温度範囲の粘度を示す一般的な式として用いられています。

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測定法

粘性率の測定方法としては、以下のようなものがあります。

繊維伸長法

一定直径を持つ適当な長さのガラス試料をシリカガラス管に吊り下げ、尖端に一定荷重を加えて、その負荷による試料の伸びより粘度を算出します。JIS法で定められている手法です。

  • η=mgl/3π(dl/dt)r2  (4)

この手法では、1) Shortなガラスの測定が困難である、2) 試料の長さ全てをカバーする均熱帯を持つ電気炉を用意する、あるいは 3) 真円のファイバーを作製することがしばしば困難である、という短所があります。

ビームベンディング法

寸法既知の丸または角棒状試料を2点で水平に支持し、中央に荷重を加えながら加熱した場合、試料のたわみの変形速度から(5)式より粘度を求める手法です。

  • η=gL3(M+ρAL/1.6)/2.4Icv  (5)

貫入法

平板状のガラスに球状または棒状圧子を一定荷重下で圧着し、圧子の貫入速度から求める手法で、粘度は以下の(6)式で与えられます。

  • η=9/32√2・Pt/Rl3/2  (6)

球引き上げ法

溶融ガラス中での球体の運動を連結した天秤で測定します。球が等速度運動をしている場合,粘度はStokesの法則より(7)式で与えられます。

  • η=2/9・{(ρs-ρ)r2g/v}  (7)

回転円筒法

同心2重円筒の間に液体を入れて、内外筒に異なった各速度で回転させた時に発生する流体の粘性抵抗によるトルクを測定し、それより、(8)式に基づいて粘度を求めます。

  • η=T/4πhω・(1/r12-1/r22)   (8)

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ガラス組成と粘度

これまではガラスの粘性の温度変化について説明してきましたが、ここからは代表的な2種類のガラス組成の粘度について簡単に述べます。

ケイ酸塩ガラス

アルカリおよびアルカリ土類酸化物の添加がガラス中のSiO4四面体ネットワークを切断するため、アルカリケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸塩のように網目形成成分を主とするガラスは比較的粘度の温度変化は緩やかです。また、2種類以上のアルカリ金属酸化物を加えると、さらに粘度が低下する混合アルカリ効果が見られます。

ホウ酸塩ガラス

常温でB-O六員環からできたboroxol群が、温度上昇とともに減少し、不規則網目構造となるため、粘度の活性化エネルギーが温度とともに小さくなります(粘度の傾きが小さくなります)。また、アルカリホウ酸塩ガラスではアルカリ含有量が増えると、粘度と組成の関係に顕著な極大および極小が現れます。これはホウ素の配位数が3から4へ変化することによって説明されています。混合アルカリ効果もケイ酸塩と同様に見られます。

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参考文献

「ガラスハンドブック」作花済夫・境野照雄・高橋克明 編集:朝倉書店
「ガラス工学ハンドブック」山根正之・安井至・和田正道 編集:朝倉書店
SPONGE21.com “粘性Viscosity” (http://www.sponge21.com/product/glossary/nense/)


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