分析・試作のご依頼 分析・試作、その他各種お問い合わせ

特別編 高機能X線回折技術

はじめにin-plane X線回折三次元極点測定その場加熱測定まとめ

NTR News第32号 (2007年1月4日発行) に掲載

はじめに

X線回折 (X-ray Diffraction) は、銅 (Cu) などの金属ターゲットに電子線を照射させて発生した特性X線(例えばCuKα線など)をサンプル表面に照射して、サンプルの結晶面で回折するX線を、Blaggの式 (nλ=2dsinθ) に基づいて検出させる測定技術であることは既に多くの方がご存知なことです(NTR News No.28にもご紹介しています)。しかしながら、近年のX線を使った解析技術の進歩は、ラボスケールでも飛躍的に発展しており、従来からのout-of-planeのX線回折に加えて、サンプル面内で検出器を走査させるin-planeのX線回折や、X線反射率測定による薄膜の密度、ラフネス、あるいは膜厚の解析(結晶質+非結晶質)、そして小角散乱測定からの粒度解析や空孔分布の解析、さらには連続的に温度を変化させた状態でのその場 (in situ) 解析など、多種多様な測定技術が汎用化されています。

ここでは、平成18年8月28日に当社の筑波事業所に導入したSmartLab(リガク製)の能力を紹介すると共に、既に表面分析装置の主力アイテムとなった最新の評価技術に触れてみたいと思います。

ページの先頭に戻る

1.in-plane X線回折

図1にはin-plane X線回折の光学系の概要をまとめています。従来のX線回折では、サンプル表面に対して直交する方向に検出器を走査して、Bragg条件で回折されたX線を走査された角度(2θ)と検出強度(cpsまたはcount)の関係で表示していました。この測定方法は、Bragg-Brentano光学系(2θーθ、あるいはθ−θ)測定と呼ばれています。

このX線光学系では、照射されるX線をサンプル表面で焦点を結ぶように絞ります。したがって、検出される回折強度は大きいですが、サンプルの表面状態や凹凸や高さの精度に大きく影響します。粉末X線回折でこのX線光学系が選択されますが、精度の高い測定では、回折X線のKβ線をカットするために、グラファイトなどでできた湾曲モノクロメーターが使用されます。

図1

図1.X線回折における各種光学系の比較

しかしながら、薄膜のように厚み方向で薄いサンプルでは、Bragg-Brentano光学系による測定では基板の情報が大きく検出される結果となり、特に、基板がガラス板などの非結晶の場合には、非結晶の回折データがバックグランドのように大きくなり(いわゆるハローと呼ばれる現象)、測定したい薄膜の回折線の情報が非常に小さくなってしまいます。

そこで、表面に入射されるX線の侵入深さを浅くした測定が必要となります。この測定は、平行ビーム薄膜測定と呼ばれます。平行ビームによる測定では、X線の入射角度は0.3°から1.0°の範囲で、サンプルの膜厚や測定したい深さなどによって変化させます。しかしながら、この平行ビームを用いた測定法でも、数nmレベルの膜厚を持つ極薄膜や特定の方位の結晶面の測定は極めて困難となります。その理由は、図2に示されるようにin-plane測定での軸調整(いわゆる軸立て)の機構に見ることができます。

図2

図2.in-plane X線回折におけるサンプル表面の高さ調整(軸立て)方法の概要

in-plane X線回折は、既に示したようにサンプル面内で検出器を走査させる測定方法です(図1参照)。すなわち、この測定では、サンプル表面に対して垂直か高角度で配向する結晶面の回折情報を得ることが出来ます。図2に示すように、サンプルの傾きや高さの調整は0.0001°の精度で行われるために、照射されるX線に対して非常に精度の高い表面状態を維持することが可能となります。この軸立てを行うと、数nmレベルの極薄膜の測定や強度を得にくい浅い部分の測定が可能となります。また、基板面に対して直交する結晶面の測定も可能となります。さらに、このin-plane軸立てを行った後に、従来からのout-of-plane平行ビーム薄膜測定を行うと、基板に対して低角度に配向する結晶面に対して非常に薄い部分の回折X線を得ることが可能となります。図3にはこのようなin-plane測定を行ったサンプルの測定結果をout-of-planeの結果と比較して示しています。平均的な回折強度は低いですが、回折線のS/N比が非常に高いことがわかります。

図3

図3.in-plane X線回折の測定結果(ガラス基板上Au膜)

ページの先頭に戻る

2.三次元極点測定

最新のX線回折装置は、ほとんどの場合サンプルを水平に置くことが出来ます。また、方向の異なる軸を連続的に制御させることによって、Braggの式を満たす回折線を三次元的に計測することが出来ます。図4には三次元極点測定の概略図をしめします。

図4

図4.三次元極点測定の概略図

極点測定の流れは以下の通りです。

  1. 平行ビームX線を用いて、見たい結晶面に対してBraggの式を満たす条件を探します。
  2. ゴニオメータを上記のθ-2θ値に固定し、サンプルステージを地球儀に例えると赤道と緯度に分けて回転させます。すなわち、緯度0°から90°までスキャンし(α:χ軸)、またそれぞれの緯度に対して赤道内で360°回転させます(β:φ軸)。
  3. 上記の測定結果に対して三次元エクスプローラーを用いて画像処理します。

このような測定を行うことで、図5のような任意の結晶面の配向状態を球体表面の等高線で示すことが出来ます。従来では、結晶配向性は、基板面に直交する測定結果から推測しておりましたが、三次元極点測定によって、定量的な情報が得られるようになってきました。

図5

図5.三次元極点測定の結果(ガラス基板上のAu膜)

ページの先頭に戻る

3.その場加熱測定

分析装置の技術向上は日々著しいものがあり、従来では、測定するサンプルを垂直に配置するなどのために、加熱しながらX線回折をすることに対してかなりの制約がありました(サンプルが落ちたり反ったりするなど)。当社に導入されましたSmartLabは、サンプルを常に水平に配置することができるために、加熱しながら各種の測定を同時に行うことが出来ます。図6は、加熱時の測定状況を示し、また図7には硫化ニッケル (NiS) サンプルの測定結果を示しました。測定できるサンプルの大きさは20mm程度の大きさですが、図7に示されるように加熱温度の違いによって硫化ニッケルのα相とβ相の相転移の状態の変化を明瞭に検出できました。

図6

図6.in-situ加熱装置を使用したX線回折測定の概要

このように、その場加熱でのX線測定では、out-of-plane回折、in-plane回折、反射率、三次元極点測定、あるいは小角散乱など多くのX線を用いた回折や反射や散乱の測定が可能です。加熱できる温度は室温から900℃で、熱履歴は任意に設定することができます。

図7

図7.in-situ加熱による硫化ニッケル (NiS) の相転移状態の測定結果

ページの先頭に戻る

4.まとめ

最新のX線回折装置の分析能力は非常に高いものがあります。しかし、その反面、どのような測定方法が最適であるかをサンプルの状態や目的に応じて適時選択して行かねばなりません。当社では常にそのような方向から分析方法や解析方法をお客様と共に考えて行きたいと思います。是非、お気軽にご相談下さい。


このページの情報に関するお問い合わせは、当社伊丹事業所までお願いいたします。

ページの先頭に戻る

関連ページ

以下の技術情報もご参照ください。