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初級編 ガラスの強度と破壊

ガラスの強度について強度の測定法(板状ガラス)強度の解析法ガラスの破壊について

NTR News第33号 (2007年5月2日発行) に掲載

1.ガラスの強度について

ガラスはもろくて弱い材料というイメージがありませんか?

確かにガラスの食器は落とせば割れるし、ガラスの瓶も窓ガラスも割ろうと思えば簡単に割ることができます。プラスチックや金属に比べれば“壊れやすい・危なっかしい”材料と思われがちですが、実はその理論強度(原子やイオン間結合を切断・分離して新しい面を作るために必要な応力)はさまざまな材料の中で最も強いグループに分類されているのです。それでは、なぜ、実際のガラスはもろくて弱いのでしょうか。

その答えは、ガラス表面に存在するキズにあります。

目には見えなくても、ガラス表面には製造工程や使用過程で他の物体との接触によって生じた無数のキズが存在しています。このキズが応力集中源となり、実際の負荷応力よりもはるかに大きな応力がキズの先端に発生します。そのため、ガラスは理論値よりも2桁以上弱い強度で破壊してしまうのです。

ここで、『キズのつき方に違いはあれど、どんな材料にもキズはあるのでは?』という疑問が生じます。なぜガラスだけがキズによっていとも簡単に割れてしまうのでしょうか。

それは、ガラスが塑性変形をほとんど起こさない、典型的な脆性材料だからです。金属やプラスチックの場合、大きな力を加えても塑性変形(転位や流動)によってキズの先端の応力を緩和することができるのでなかなか破壊には至りません。一方、ガラスはほぼ、弾性変形のみで塑性変形を起こさない材料であるためにキズの先端にどんどん応力が集中し、そのキズが伸長することで破損に至ってしまうのです。このように、様々な材料の破壊を考えるうえで、キズの成長しにくさ/しやすさ(靭性)が、非常に大きな意味をもっているということをご理解いただけたでしょうか。

fig.1

図1 応力−ひずみ曲線の例

ところで、材料の強度を示すもうひとつの尺度に『弾性率』があります(ここでは弾性率の一つであるヤング率について述べます)。弾性率は加えられた力(応力σ)と変形量(ひずみε)の関係を示す値で、次式で表されます。

E=σ/ε [Pa]

弾性率は、弾性変形領域における応力−ひずみ曲線(S-S curve)の傾きで表されます。弾性率が大きい材料は硬くて変形しにくく、逆に言えば、小さなひずみでも大きな応力が発生してしまう、という性質を持ちます。ガラスの場合、弾性率は組成に依存して一般にE=50〜90GPaと比較的大きいので、負荷による発生応力が大きくなります。しかも塑性変形しにくいためにキズに応力が集中しやすいので、弾性限界付近で一気に破壊してしまうということなのです。

表 様々な材料のヤング率(単位:GPa)

板ガラス 72
メタクリル樹脂 3.1
ポリカーボネート樹脂 2.1〜2.5
鋼(半硬鋼) 206〜216
ステンレス (SUS304) 193
アルミニウム合金 (6063) 71
普通コンクリート 20
杉(気乾) 7.0

(NSG ガラス建材総合カタログ ガラス技術資料編)

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2.強度の測定法(板状ガラス)

ガラスの強度には、大きく分けて「面強度」と「エッジ強度」の2種類があり、それぞれ異なった方法で強度を測定します。

(1)面強度測定

「面強度」はその名の通りガラスの面内(表面)強度のことで、一般にエッジよりも高くなります。リング曲げ試験 によって測定することができます。

fig.1

図2 リング曲げ試験

(2)エッジ強度測定

「エッジ強度」はガラスの端部分の強度のことで、切断の良し悪しや研磨処理の違いによる差を調べることができます。「JIS R 1601 ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法」に準じた、3点曲げ試験または4点曲げ試験によって測定することができます。

fig.3

図3 エッジ強度試験(曲げ)

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3.強度の解析法

前述の通り、ガラスの強度はキズの大きさや数、深さに依存するため、たとえ同条件で作製・取扱されたガラスであってもその強度は分布をもちます。加えて、強度試験によって評価される範囲(面積)は非常に限られているため、必ずしも評価範囲に製品全体で一番大きくて深いキズがあってそれを評価できているとは限りません(=製品全体の評価ではないということです)。

つまり、ガラスの強度を考える上で最も大切なことは、強度の平均値ではなく、その分布(バラツキ)なのです。

ここで、ひとつの目安となる値が『破損確率1/1000(=許容応力と等しい応力が発生した場合に、1000枚に1枚破損する可能性がある強度値)』です。実際の強度試験では、通常50〜100枚程度の試料を試験したのち統計処理を行い、その試料の強度として1/1000破損確率の値を求めています。統計処理は、「JIS R 1625 ファインセラミックスの強さデータのワイブル統計解析法」に準じて実施しています。

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4.ガラスの破壊について

実際の様々なガラス製品は、前述のような方法で強度調査を行い、その強度が十分保たれる状況で使用するのが理想的です。しかし、現実には、ガラスは多種多様な環境下において使用されており、その強度を超える負荷が加えられることやガラスそのものが強度低下を起こす場合もあり、その結果として破損することがあります。ここでは、ガラスの代表的な破壊現象(割れ方)を3種類紹介します。

○曲げ割れ
前述の強度試験のように、ガラスが何らかの外力を受けて曲げられることによって生じる破壊です。
○熱割れ
ガラス物体内で温度差が生じることによって熱応力が発生し、それが原因で破壊に至る場合です。
○風冷強化ガラスの破壊
自動車用ガラスや、ドア付近に用いられる風冷強化ガラスに見られる、ガラス全体が粉々に砕け散る破壊です。

ガラス製品が破損したとき、その原因を調査し、対策を講じるための一助となるのが『フラクトグラフィー(破面解析)』と呼ばれる手法です。破損したガラスの破面には、始発点や特徴的な文様などの破損時の状況を示す痕跡が残されていることが多く、これらを元に負荷応力の値やその方向を推定することができます。さらには、詳細な観察解析を加えることによって、破損の原因を明らかにすることも可能です。

<参考文献>
「ガラス光学ハンドブック」 山根正之・安井至・和田正道 編集:朝倉書店
「ガラス建材 総合カタログ ガラス技術資料編」 発行:日本板硝子株式会社


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