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第20回 サンプリング技術

最近の評価分析は、分析装置の高性能化と解析ソフトの飛躍的な向上によって、解析されたデータの信頼性は向上し、データ加工に対してもデジタル処理や電子ファイル化などその応用性は以前とは比べ物にならないものになっている。我々はそのような仕事に対して、お客様から分析料金という対価を頂いて事業を行っている。このように、評価分析の花形は、上記のような分析や解析そのもののように思われがちであるが、それ以前のサンプル調製(サンプリング)技術は、時間的あるいは難易度的にも全体の作業の95%以上を占める場合が多い。

その典型的な例は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察であろう。TEM観察では、サンプルを数10nm以下の厚さに加工して電子線を透過させて観察するために、ArイオンミリングやFIB(収束イオンビーム)加工などのサンプリング工程が全体の90%以上を占めているといっても過言ではない。単純にTEMのサンプルを作製するからといっても、高倍率で超高分解能の格子像を観察するのか、エネルギー分散型X線検出器(EDX)を用いてnmスケールで元素を組成分析するのか、あるいは電子線回折(ED)などで薄膜の結晶構造の解析まで肉薄するのかでサンプリング方法や技術は当然のことながら異なるし、その作業工程に対する時間も大きく変化する。

FIB装置を用いたサンプル加工においても、FIB装置があれば何でも簡単に加工できるのではなく、サンプルごとに最適なイオン照射条件やビーム径を見出して加工したり、切削面のダメージ層を低減するために色々な仕上げ加工をしたりするなど、装置の運用やその応用技術に非常に高いノウハウが求められている。このサンプリング技術が高ければ高いほど、観察における像の解像度や見え方は格段に良くなる。

したがって、多くの企業や試験所の分析部門で、一般的にセルフユーザーとして汎用的に使われている走査型電子顕微鏡(SEM)やTEMにおいても、やはりサンプリング技術や分析技術に精通した技術者による作業には大きな価値があるのである(すなわち、餅は餅屋に頼むべきとでも言うことであろうか)。このようなノウハウや技術は、ガラス材料を扱い慣れている我々のような会社もあれば、金属材料を常に評価している金属メーカーの分析部門もあり、それぞれが独自の技術を持っているのである。

近年の作業の効率化やコスト削減から、また開発技術者も評価技術に触れる多様化からかは切り分けられないが、分析や測定の依頼をするよりも直接セルフユーザーとしての装置の使用が増えているように思われる。しかしながら、分析技術者は、1つのサンプルの分析や観察に対して、サンプル調製から結果の考察までトータルに考えてよいデータを得ようとしているのだから、「これは」というものは少なくとも専門家に任せるべきと思っている。これが本当の研究開発者の工数機会損失を減らし、本当の意味での効率化につながるのではないだろうか。

国内外の分析技術者と議論すると、世界的な流れとして、企業だけでなく大学や研究所でもいわゆる技官と言われる加工やサンプリングの技術に卓越した人は少なくなり、またそのような部署もなくなっている傾向にあるらしいが、これは「技術立国日本としての本当の意味でのボディーブローにならなければ良いが」と、危惧している。

分析する技術者においても、装置の高性能化の影響は大きく、上記のサンプリング技術に対する甘さが出始めているのではないかと感じることも多々ある。最近では、サンプルの切断や研磨なども自分で行うことを嫌う風潮があることをなんとなく感じている。最終的に自分自身でサンプリングをしないとしても、その評価技術に携わるものは、一度は全ての工程を把握することが重要であり、本当の意味での考察にもつながると考えている(魂のこもった報告書になる)。

仕事の多様化が進み、効率化やコスト削減のなかであっても、我々のような分析技術者はサンプリング技術から分析と考察に対して、理論的な面も含んで取り組める人材を育成しなくてはならない。

NTR News第32号 (2007年1月4日発行) に掲載

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