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第23回 1%のひらめきと99%の汗

かなり昔に流れたテレビのコマーシャルであったと思うが、こんな面白い内容の歌がある番組の広告の中であった。

「エジソンおじさん言いました。発明というものは、1パーセントのひらめきと99パーセントの汗である。汗と汗とが・・・・」

この後は記憶の中でメロディーが先行して歌の内容は正確には覚えていないが、あの有名な発明王であったエジソンの「発明」や「研究開発」のスタイルと比較して、スポンサーである製造メーカー自身の開発や製品の技術的なレベルの高いことを宣伝したものだったと記憶している。

確かに、我々が「研究開発」を行っていたり、あるいは試験分析の「技術開発」を行っていたりしているときでも、常に24時間体制で新しいアイデアや発明や「ひらめき」が次々と出てくるものではないことは、読者の皆さんが既にご承知のことであろう。これらのほとんどは、思考を巡らせたり実施項目を繰り返す中で、「ふっ」とした瞬間に新鮮なものが出てきて、そこから技術が急速に芽吹いてくるものだと感じている。そして、そのような場面は実際の仕事の中であったり、あるいは議論の中や実験の工夫を巡らせていたり、さらには全く別の場面だったりするのである(場合によっては夢の中にも出てくると聞く)。すなわち、「ひらめき」までの努力は、上述の歌の「99%の汗」となり、それからも実用化に向けて大きな汗をかくのだと思う(だから実際には100%以上の汗であろう)。そうした意味では、0.1パーセント以下の「ひらめき」と99.9パーセント以上の「汗」と言っても過言ではないと思う。しかしながら、この歌には何か重要な意味が含まれていると思うのは私だけであろうか。

すなわち、99パーセントの「汗」とは単なる体を動かしたときに出る汗だけではなく、頭の中の知識をもって知恵を巡らせた汗であると思うのである。1パーセントの「ひらめき」のためには、日頃から頭の汗をかくことが重要であると言っているのだと感じている。この汗は、自分自身の目的に対する直接の取組みそのものだけでなく、周辺分野を埋める広い範囲の興味、あるいは他技術を自身の分野に適用しようとする試行錯誤、そして周辺の技術を吸収しようとする強い好奇心や積極性と現状に満足できないハングリーな精神など全て含まれるように感じている。

広く深い知識を持って知恵を巡らせる、刺激を持つために異分野も積極的に吸収する、議論できる友人を持つ、常に「どうしたら改善できるか」を考える、人に言われる前に自分自身でやってみる、と言ったことなどが99%の努力となって、その結果1%の「ひらめき」が出てくるのだと思う。

ここで、余談であるが、戦前に北アルプスの槍ヶ岳北鎌尾根で凍死した加藤文太郎の話をしてみたい(新田次郎「孤高の人」から)。彼は、戦前の海軍工廠(こうしょう)の技術者であったが、あるとき雪洞でのビバーク中に穴に流れ込んでくる粉雪の流れをみて、軍艦の内燃機関の改良の「ひらめき」をしたと記述されている。こうしてみると、我々技術者は人工的な技術開発に従事しているが、「ひらめき」は自然の中にもたくさんあるようである。しかしながら、タイムリーに「ひらめき」を持つためには、その存在に気づくことが大切である。すなわち、頭の中の高い知識を持って知恵を巡らせ、99%以上の汗をかくことによって、初めて1%の「ひらめき」から「発明」することができて、そして「改良」や「開発」に至るのだと思うのである。

頭の中をこのように常にホットな状態にすることは技術者として最も大切であり、そのためには、我々は部下に対してもより良い汗をかける指導ができるマネージメントが必要となるのであろう。

NTR News第35号 (2008年1月7日発行) に掲載

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