色特性の計算
|はじめに|測定原理|測定と結果|解析原理(色度図(色度座標)、色立体、色差)|
本コーナでは、ガラスやセラミックス、あるいは有機材料の特性評価の中でも重要な光学特性の測定と解析の方法について解説します。今回は、その中でも特に色の表現方法について簡単に説明を行います。分光光度計で測定した特性値から求めた各種の色の表現方法は、ガラス基板そのもののや薄膜製品などの反射色特性の評価にとって非常に重要なものです。
はじめに
光の特性評価には、透過率・反射率・ヘーズ率・濁度・色特性・偏光特性など、いろいろな面からのアプローチがあり、それぞれの特性はそれぞれ目的とする製品の品質や開発項目に関して重要な位置づけにあります。本文で、光学測定の全てを一度で紹介することはスペースの関係で難しいので、今回は分光特性から色を表現する方法について紹介します。
1.測定原理
ガラスやセラミックスなどの透過率や反射率の分光特性を測定するための最も簡単な方法は、市販の紫外域〜近赤外領域までの分光光度計を用いて測定する方法です。もちろん製品の中には積分球が装着された最高機種のものから(上図参照)、簡易的なものまで多くの種類とランクがあります。最も簡単な装置として、測定してすぐに色特性が得られる色差計などもあり、このような装置を使って測定することで透過光や反射光の色特性を容易に得ることが可能です。また、最近では、携帯に便利なハンディタイプの分光光度計などもあり、ガラスの施工状態での測定も可能となっております。
積分球は、通常の分光光度計の検出部分に装着されており、原理的にはサンプルを通過した(あるいは反射した)光の全てを検出器に取り込むための治具です。積分球は、通常60mmΦ程度の球状の内面に硫酸バリウム (BaSO4) を塗布したものです。この積分球を用いれば、サンプルを通過した光を直接検出器に取り込めなくても(例えば散乱光のような場合)、積分球内面で反射した光が最終的には検出器に取り込める構造になっております。
2.測定と結果
分光測定(反射および透過)の一般的な測定の流れは以下の通りです。
- 測定する光の波長に対応した複数の光源を使用して回折格子やその他の方法で光源から出た光を分光します。
- 試料表面に上記の分光された光を入射させ(場合によってはスリットやアパーチャーや集光レンズなどで絞る場合がある)、表面での反射光や透過光について、それぞれの波長に対する強度をブランク(試料が無い場合)の強度を100%として示します(右図参照)。反射率測定の場合には、V-N法やV-W法のような絶対反射率評価と、基準ミラーを100%としたときの相対反射率評価があります。
- 通常の測定では、入射させる光の波長に対して、紫外域の240nmから近赤外域の2600nm の任意の範囲で測定が可能です。しかしながら、以下に述べます色特性の計算は、可視光(380nm〜780nm:JIS-Z8701による)の範囲でのみ行うために、色特性の計算だけならば上記の波長の範囲で十分です。
3.解析原理
分光光度計を用いた測定によって得られた各波長に対する透過率(または反射率)のデータは、上記のJIS-Z8701 の方法に従って色特性の計算が行われます。すなわち、特定の波長での吸収はその波長での色を表しますので、そのような現象を定量的に示すのが色特性の計算です。計算の概要は以下の手順で行います。
1)JISーZ8701 の方法に従って、各標準光源に対するスペクトル三刺激純値(青 (z)・緑 (y)・赤 (x) の3色での係数)を用いて各波長に対する透過率または反射率にこれらの係数を乗じます。
まず、光源色の三刺激純値は以下のように求められます。
ここで、P(λ) は光源の分光分布であり、
はそれぞれ2度視野 XYZ 系に基づく当色関数です。また、k は刺激値 Y の値を測光値に一致するように定める係数です。この標準光源 P(λ) の分光分布の値と、スペクトル三刺激純値ののそれぞれの値がJISには表で示されております。
次に、透過色、または反射色の物体の色の三刺激純値を求めます。
- a.透過物体の色の三刺激純値:

- b.反射物体の色の三刺激純値:

ここで、上記の式の K は以下の式で示されます。
|
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
*上記の780nmまでの値の詳細はJIS-Z8701を参照のこと。ここで、上記の標準光 A、B、C および D65 の意味は以下の通りです。
- 標準光A:色温度2856Kで普通の白熱灯の分光分布を持つ光源
- 標準光B:色温度4874Kの分光分布を持つ光源
- 標準光C:色温度6774Kで国際的に使用され、5月の午後2時の北窓の開せつ光
- 標準光D65:色温度6504Kの昼食光の代表で、CIE・ISOで決められている光源
2)次に、上記の計算で求められたサンプルの透過物体(または反射物体)の色の三刺激純値から、それぞれ X, Y および Z 成分の割合を求め、この値を x, y および z とします。
この x, y および z の値を用いて、色度座標上で測定されたサンプルの色の表現がなされます。また、上記のスペクトル三刺激純値は、2度視野に基づく XYZ 表色系に対して、「国際照明委員会 (CIE:Commission Internationale de I'Eclairage) 」が1931年に推奨したものであり、観測者の目に対して張る角度が1〜4°の視野における視感等色に対して良い相関を得ようとするときに用いるものです。一方、観測者の目に対して張る角度が4°を越える視野において視感等色に対して良い相関を得ようとする場合には、CIE が1964年に推奨した10度視野に基づくX10Y10Z10表色系が用いられます。すなわち、この場合には、上記の計算式そのものは適用されますが、用いられるスペクトル三刺激純値のテーブルは10度視野のものになります。詳細は JIS-Z8701 (1982) に記載されておりますので参照お願いします。
3.1 色度図(色度座標)
上記の計算で求められたサンプルに対する x, y および z の値の中から、x と y の値をそれぞれ x-y 座標にプロットして、計算に用いた標準光源(A、B、C、あるいは D65 光源)の原点の座標から、このプロットしたサンプルの x-y 座標を通り、色度座標上にすでに記載されているスペクトル軌跡との交点を求めます。この交点が主波長 (nm) です。主波長は色の違い(青や赤や緑色など)を表します。また、標準光源の原点の座標と測定されたサンプルの x-y 座標の距離を刺激純度といい、標準光源とスペクトル軌跡との距離を1.0 とした場合の距離の割合で示されます。通常、刺激純度はサンプルの色の濃さを示しており、すなわち色度座標から、刺激純度の値が小さいと薄い色で表現され、刺激純度の値が大きいと色が濃いことを示しております。以下には、標準光源の色度座標とスペクトル座標の一部を示します。
|
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
XYZ表色系色度図
2度視野 XYZ 系による色度図(JISによる)
波長目盛りの入った曲線:スペクトル軌跡
スペクトル軌跡の両端を結ぶ直線:純紫軌跡
A, B, C, D65 は標準光の色度座標を示す
ここで、上記に記載された色相と彩度について簡単に説明します。
色相 (hue) は赤、黄、緑、青、紫などで表される色感覚の属性(明るさ・色相・彩度)の一つであり、それを尺度化したものです。また、彩度 (chromaticness) は色の鮮やかさを等しい明度の無彩色からの隔たりで表したものです。1)直感的な色の鮮やかさの概念(鮮やかさ・カラフルネス)、2)同一条件で照射された白色面の明るさとの比(クロマ)、および3)サンプル自体の明るさとの比で判断される鮮やかさ(飽和度)、などの3段階の概念があります。
3.2 色立体
色立体(色空間)には L*a*b* とか Lab といった表現の三次元の座標軸が使われます。ここで、L は明度 (lightness) を表し、L=0 が最も暗く(黒色)、L=100 が最も明るい状態(白色)を表現します。*a*b*(またはab)に関しては、tanθ(b*/a*)(または tanθ(b/a))は色相 (hue) と呼ばれ、それぞれ+と−の領域を持っております。丁度、原点0に垂直方向に L 軸が立っており、ある L の値で縦軸と横軸に a と b が直交している状態になっております。a が+ならば赤、−ならば補色の緑、b が+ならば黄色、そして−ならば補色の青になります。色々な a*b* あるいは ab の値の組み合わせで色の中間的な表現がなされます。
L*a*b* 系表色系色座標
L*a*b* 系色立体
この L*a*b* とか Lab の座標の計算は、以下の式に基づいて行われます。これらの計算においても、すでに求められたサンプルの三刺激純値 X, Y, Z が用いられます。
- Lab色立体:

光電色彩計で直読するのに便利なものとして、ハンター (R.S.Hunter) が1948年に提案した均等色空間を示す座標軸に使われます。 - L*a*b*色立体:

CIEが1976年に定めた均等色空間の1つで、(CIE1976) L*a*b* 表色系、または CIELAB 表色系ともいいます。
上記の他に、CIEが1976年に定めた均等色空間の一つである L*u*v* 色空間((CIE1976) L*u*v* 表色系あるいはCIELUV 表色系)や、マンセル (A.H.Munsell) の考案による色票集に基づいて、1943年に米国光学会 (Optical Society of America) の測色委員会で尺度を修正した表色系であるマンセル表色系などもあります。
詳しいことは、JISのハンドブックなどをご覧頂くか、お問い合せ下さい。
3.3 色差
上記のように、サンプルの反射や透過などの色を定量的に表現できることがわかりました。ここでは、サンプルが複数存在する場合に、色の定量的な差を表す方法を説明します。一般的に、サンプル間の色の定量的な差は、色差 (color difference) と呼ばれます。これらの値を示す計算式は、それぞれ Lab 色立体や L*a*b* 色立体などの各々の表色系に対して以下の計算式で示されます。
- Lab色立体:

- L*a*b*色立体:

上の2つの色を見てみなさんはもうお解りですね。そうです、これらの色は、Lab もしくは L*a*b* の3次元の座標軸で示される2点間の距離を求める式そのもので示されております。このような色差を求めることで、サンプル間の微妙な色の違いを以下のようにして区分することも可能となります。
| Textile terms | 感覚的表現 | NBS単位 |
|---|---|---|
| trace | わずかな色差 | 0〜0.5 |
| alight | わずかな色差 | 0.5〜1.5 |
| noticeable | 感知し得る色差 | 1.5〜3.0 |
| appreciable | 目立つほどの色差 | 3.0〜6.0 |
| much | 大きな色差 | 6.0〜12.0 |
| very much | 多大な色差 | 12.0以上 |
以上で今回の「色に関する」勉強は終わりです。ご質問、もしくはご意見ありましたら以下でメールをお待ちしております。当社では、上記のようにJISの計算式を使って、サンプルの色を定量的に表現することを日常の業務の1つとして行っております。測定データの解析や考察、あるいはサンプルの色特性の測定なども一般依頼試験で行っております。是非、この機会に当社の技術をお試し下さい。

