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前回の続きで、今回は「神戸考現学」の服飾編をお送り致します。神戸はファッションタウンとして評価が確立していますが、ここで取り上げるのは、60〜80年代に一世を風靡したあの懐かしい「アイビー (IVY) ファシション」についてです。神戸にはまだまだ彼のファションの愛好者がいますよ。

第十七回 私的・神戸考現学 −蔦服飾的街角案内−

2005年5月26日、「VAN」を創業し IVY ファッションを日本に広め、神様とも呼ばれた石津健介氏が亡くなられた。氏の発言や書物から、ファッションを流行ではなく文化と捉え、日本に初めて男性服飾文化を根付かせた功績に惜しみない拍手と僕の先生としての氏のセンスに感謝をしたいと思う。そこで今日は、この IVY ファッションについて書いてみる。

関東では、横浜元町の「ポピー」がトラッドとして、アメ横の「玉美」や原宿の「キャシディー」がカジュアルの分野であの頃の香りを残してくれている。が、しかし、神戸には東京や横浜と同じくアイビーファッションを支える独特の余韻が今でも残っている。その一方の旗頭が、元町高架下の「Mr.BOND」でしょう。JR元町駅西口から西へ高架下をゆっくりと歩みを進める。怪しげな高架下の雰囲気がぷんぷんしてくる。往年の怪しさは少なくなりつつあるが、まだまだ初めての方には十分すぎるくらいの雰囲気だ。古着屋や雑貨屋の軒を通り抜けてモトコー(元町の高架下を略してこう呼ぶ)3丁目の交差点前にその店がある。店の造作は線路一本分程度の奥行きであろうか。お世辞にも広い店内とは言いがたいが、掘り出し物を匂わせる演出とも言えなくも無い。先ず、高架下通路に面したショーウィンドウから覗くとしよう。60〜80年代のミニカーやプレートのディスプレイの中に、チェックのポロカラーシャツやリボンベルトが並べられている。秋冬ならチルデンセータやウールのシャツが飾られている。ショーウィンドウを越えて店の中に入ってみる。所狭しと並べられた IVY やアメカジファッションが「さあ、見てくれと!」と言わんばかりに手を広げている。シャツやパンツ、ジャケットや靴に加え、帽子にマフラー、靴下にトランクスと IVY ファッションに必要な全てのアイテムが揃えられている。筆者の好きなコーナーは、シャツが並べられている棚である。サイズは不揃いではあるが、10〜20年前のシャツがあると手に入れてきた。この当時のシャツの作りは、現在とは比べ物にならないほどしっかりしている。この店では、数々のアイテムを手に入れてきた。時折、掘り出し物があるよと岡さんから声を掛けられたときのドキドキ感は言葉で言い表せない。神戸を代表する IVY クロージングだと常々考えている。

そして、もう一方の旗頭が、これまた高架下にある「TWEEDMATH(ツイードマス)」だろう。こちらは、震災前には「つるや」と名乗り、独自のアメリカントラッドを展開していた。もちろん、現在もこの路線にいささかの狂いは無い。このスジの通った商品展開には頭が下がる。オーナーは業界で有名な、アメリカントラッド通であり、その雰囲気の表現方法や素材の選択眼には IVY あるいはトラッドファンには垂涎の的であろう。各言う筆者も少ない小遣いをやりくりして、この店のブレザーを購入するのが楽しみである。大手のトラッドショップでも見かけなくなった厚手の「フラノのブレザー」は驚愕の出来である。このブレザーに袖を通すと、もう他のブレザーは着られなくなる。それぞれのアイテムが厳選されており、着こなしのアドバイスや素材の説明も丁寧で、ブレザー一着、パンツ一本への愛着が増すこと請け合いである。但し、店員さんがよく言われるのが、デザインも変えず素材も良いものを使っているため、簡単に古くならない。そのため、回転が悪いのが頭痛の種だそうだ(笑)。ここでは、ブレザー一着を購入するのに何時間もかけることにしている。頻繁に購入することのできる店ではないので、たっぷり楽しむようにしている。

筆者は、IVY やアメリカントラッドという過去に一世を風靡したファッションに興味があるため、この二つのお店に顔を出す時は十分に時間を用意して出かける。それだけ、希少なお店だし、楽しいものである。このお店があるので、神戸に出かけるのが楽しいのである。このように日常の喧騒の中で、自分なりの時間をゆったりと使える貴重な街並が神戸に残っている。目の前に海と港が広がり、背後にすぐ山が迫る土地であるため、東京や大阪のように空間的な広がりには欠ける。が、その街並を構成しているお店や人々にはかなりの広がりを感じる。

NTR News第29号 (2005年12月1日発行) に掲載

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