飛行時間型二次イオン質量分析(ToF-SIMS)

測定原理と特徴分析例分析試料の取扱い上の注意点装置の主な仕様

測定原理と特徴

ToF-SIMSは、分析試料表面にパルス状の一次イオンを照射して、その結果として表面から放出される二次イオンが検出器へ到達するまでの飛行時間差を利用して質量分析を行い、試料表面のキャラクタリゼーションを行う分析手法です。分析深さは最大1nm程度であり、分析試料表面の付着物や表面近傍の元素に関する情報が得られます。

※ToF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometryの略

模式図

図1 ToF-SIMS分析
試料表面から放出される二次イオンを検出し、質量スペクトルと二次イオン像を同時に取得します。

ToF-SIMSとXPSはともに表面分析に用いられる分析手法ですが、それぞれ特徴が異なっており、分析目的により適した方法を選択する必要があります。また併用して分析することにより、より多くの情報が得られます。

ToF-SIMS
  1. 表面に存在する物質の定性分析
    二次イオン種の解析によって、機材の表面状態(官能基、微量の付着物質)の定性分析ができる。
  2. 二次イオン像
    特定の二次イオンの面内分布を見ることができる(図1の右端のimage)。
XPS
  1. 表面組成(半定量分析)
    ピーク強度から元素の存在比率を求めることができる。またスパッタイオン銃を併用して深さ方向の分析もできる。
  2. 化学状態分析
    光電子スペクトルのピークシフトの位置や波形の解析によって、目的元素の結合状態を推定できる。

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分析例

−石英ガラスの表面汚染の分析例−

以下の例は、洗浄した石英ガラスの表面に付着してくる物質を分析したものです。

洗浄直後では石英ガラス最表面に由来する二次イオン(Si+, SiOH+)が確認されました(図2の上段)。

この石英ガラスをとある環境下で2週間保管したところ、有機物に由来する二次イオン(C2H5+ (29amu), C3H5+ (41amu), C4H7+ (55amu), ...)の強度が増大しました。また、ポリジメチルシロキサンに代表されるシリコーン化合物由来の特徴的な二次イオン(C3H9Si+, C5H15OSi2+, ...)が確認され、シリコーン化合物が石英ガラス表面に付着したことがわかります(図2の下段)。

XPSで同じサンプル表面を分析した場合、石英ガラス由来のSiとシリコーン化合物由来のSiの区別が困難であり、炭素Cのピーク強度の増大から「有機物が付着した」との推定までしかできないのに対して、ToF-SIMSではもう一歩踏み込んで「シリコーン化合物の付着があった」と分かります。

この例のようにToF-SIMSによる表面分析では、分子構造を保持したフラグメントイオンが検出されるため、測定した試料表面に存在している物質の分子構造をある程度推定することが可能です。

石英ガラス表面のToF-SIMS質量スペクトル

図2 石英ガラス表面のToF-SIMS質量スペクトル(正二次イオン)

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分析試料の取扱い上の注意

ToF-SIMSによる表面分析は、上記の分析例ように試料のごく最表面(〜1nm)を分析する手法です。そのため、分析したい表面が何らかの理由で汚れてしまうと、元の表面が失われてしまいます。

そのため、分析試料の取扱いでは「分析箇所周辺には何も触れないようにする」を基本に、以下の点に注意を払うようにしてください。

望ましいこと 避けるべきこと
  • アルミホイルで試料の周囲を包み、清浄なケースに入れる
    (ガラス製や金属製の容器、また揮発成分が低く抑えられていることが確認されているプラスチック容器を用いる)
  • 分析箇所周辺を素手や手袋で触る
  • ビニール袋に試料を直接入れたり、紙で試料を包み、分析箇所に接触してしまっている
  • 特にシリコーンゴム系の粘着剤を使用した粘着テープで分析試料を貼り付ける

※プラスチック、紙、粘着テープの全てが使用不可というわけではありません。

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装置の主な仕様

一次イオン源 Au
分析領域 50μm×50μm〜800μm×800μm
検出可能な二次イオンの質量電荷比 (m/z) 常用で最大2000amu

このページの情報に関するお問い合わせは、当社伊丹事業所までお願いいたします。

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